【実務に生きる法律 Part 1】実務に生きる行政法
司法試験に合格後、どのような流れで法曹に巣立っていくのでしょうか?裁判官、検察官、弁護士になるためには、司法試験に合格した後、「司法修習」と呼ばれる研修を受ける必要があります。司法修習を受ける研修生は「司法修習生」と呼ばれ、裁判所、検察庁、法律事務所をめぐり、実際の現場に赴き、生の事件を扱いながら12ヶ月間のOJT研修を受けます。司法試験合格迄に座学で学ぶ法律、と司法修習司法修習で学ぶ法律、どう違うのでしょうか。
本連載では、司法試験史上最年少合格を果たし、69期司法修習生として司法修習を終えたばかりの千葉 悠瑛さんに、初めて実務に触れた「司法修習中」だからこそ、学んだ法律知識について、執筆していただきました。法律を勉強している中で、「この知識って、どう実務に生かされるんだろう?」「実際の生の事件に生かされる法律ってどのようなものなのだろう?」といった疑問をお持ちの方に、ぜひ読んで頂きたいです!第一弾は、【実務に生きる行政法】編
司法試験の科目のうち、民事系科目と刑事系科目で学ぶ内容は、実務で活用する場面がイメージしやすいと思います。他方、公法系科目については、憲法はもちろんのこと、行政法も、民事裁判や刑事裁判に比べて行訴訴訟の数は圧倒的に少ないですし、行政訴訟を専門的に扱う事務所にでも勤めない限りなかなか扱う機会はなさそうな気がしますね。
私も受験生の頃はそのように考えていたので、「処分性」などの典型論点以外はあまり真面目に勉強していませんでした。ところが、司法修習中、実務修習先の弁護士事務所(一般民事・刑事を幅広く扱う事務所です。)で、思わぬところで行政法に触れる機会がありました。
一つ目は、地方自治体の情報公開審査会です。
情報公開条例では、情報公開法と同様、行政機関が住民等から公文書に記載された情報の公開請求を受けたときには、条例に定められた不開示情報(例えば、公開されれば個人のプライバシーを侵害するような情報など)にあたらない限り、その情報を公開しなければならないとされています。そして、行政機関が、公開請求がされた情報を、不開示情報にあたると判断して非公開の決定をしたときには、その決定に不服がある人は、行政不服審査法による不服申立てを行うことができます。行政法の勉強がある程度進んでいる人はご存知の通り、通常の行政不服審査では、処分庁又は直近上級行政庁が不服申立てを審査し、判断を下します。ところが、情報公開条例にもとづく開示請求に対する決定に対する不服申立ての場合、行政機関は、第三者的な諮問機関である情報公開審査会に対して意見を求めなければならず、情報公開審査会は、これに対して答申という形で意見を述べることとされています。
この情報公開審査会の委員は、学識経験者等で構成されているのですが、行政法の研究者はもちろんのこと、弁護士も委員を務めることが多いようです。私の実務修習先の指導担当弁護士も、一般民事事件を中心に扱ういわゆる町弁であり、行政法の業務を専門的に扱っているわけでもないのですが、縁あって五人の委員のうちの一人を務めていました。私も修習の一環として答申案の検討を行ったのですが、それまで情報公開法の条文をまともに参照したことすらなかったので、すぐに同法の解説書にあたり、四苦八苦しながら答申案を検討しました。
二つ目は、条例策定委員会です。
私の指導担当弁護士は福祉関係の分野を得意としているのですが、地方自治体がその分野の条例を制定するに際して、条例策定検討委員会の委員として、立法に関するアドバイスを行っていました。
こちらについても、修習の一環として私も条例案を検討することとなったのですが、まさか自分が条例を書く側になるとは思って条文を見たことなどなく、参照できる資料も乏しかったので、まさに暗中模索といった感じでした。
最後に
このように、ひとたび実務に出れば、意外な場面で意外な知識や経験が役に立つことも多いと思います。そう思えば、行政法に限らず、一見役に立たなそうな分野でも、モチベーションを維持して学習できるのではないでしょうか。次回は、【会社法:株式会社以外の会社の種類】!ぜひご期待ください。
千葉さん、お忙しい中コラムの執筆をいただき、ありがとうございました。
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